自分の死が迫っていることを知らなければ、実は人間は「その日」を生きることなどできない。果たして、死はそれほど恐ろしいか、ということになると、私は少し疑っている。ーー夫である三浦朱門(mén)を在宅介護(hù)で看取ってから約2年。作家?曽野綾子は靜かに、慎ましく一人の毎日を生きていた。 一汁一菜の食事をしみじみと味わい、新たな飼い貓の姿を橫目に、これまで歩んできた年月の記憶に遠(yuǎn)く思いを馳せる。優(yōu)しさとはなにか、哀しみとはなにか。そして、人間がこの世に生まれてきた使命とはなにか。やがて否が応でも頭をよぎるのは、自分自身の「最期」をいかに迎えるかということ。 「私は、すべてを受け入れ、平凡な生活を心底愛(ài)する」。いずれは誰(shuí)もが一人になる。そのとき、どうあるべきか。老いに直面するすべての人に読んでほしい、88歳の著者が至った「最後の境地」。 大ベストセラーとなった『夫の後始末』続編、週刊現(xiàn)代連載の待望の単行本化。