朝の清々しい光のなかを娘は竹竿に縋って歩いてゆく。一心不亂、黒い眸を活きいき輝かせ歩く稽古をしているのだ。それは疲労しきった男の胸に沁みた。男の身體は賭場(chǎng)の匂いに濃くつつまれている。博徒の孤獨(dú)な心象を鮮やかにえがく表題秀作のほか、人足、荒くれなど、巷のはぐれ者たちの哀切な息づかいを端正に捉えた短篇名品集。