西條隆は京都市內(nèi)の織物會社につとめる平凡なサラリーマンであったが、ふとしたことから殺人事件の犯人にされてしまい、警察に逮補された。その日は日曜日だった。晝すぎに山に仕掛けておいた熊のワナを見ようと、水平二連の古い猟銃を持ち、猟犬をつれて山に入った。二十メートル離れた杉木立の間にチラッと黒いものが動いた。猟犬のタロウも獲物を見つけた吠え聲をあげる。てっきり熊だと思い込んで発砲した。しかし、熊ではなく、西條は雪の寫真を撮ろうとして入山した隣町の醫(yī)師池內(nèi)を殺害してしまった。警察も、それが池內(nèi)醫(yī)師でなければ、故意に殺害したとは考えなかっただろう。池內(nèi)は西條の妻章枝の、人も知る愛人だったのである。章枝の証言で西條は懲役八年の実刑に処せられたが、ワナは思わぬところで露見した。他4編。