夏目漱石の中編小説「野分」および「坑夫」の2篇を収録する『草合』の初版。「野分」は明治41年1月の「ホトトギス」にて一括発表、「坑夫」は「虞美人草」に次ぐ朝日新聞入社後の第二作として、東京大阪朝日にて明治41年1月から4月まで連載されました。単行本収録は本書『草合』が初。
「野分」は、「白井道也は文學者である?!工趣いγ邦^から始まるように、文學者が主人公。この白井道也を中心に、白井と大學で同窓だった高柳?中野の三人の考え方?生き方を描いた內容です。文學者あるいは學者?教育者などという存在に対する漱石自身の考え方が表出した作品。
「坑夫」は足尾銅山に坑夫を志した男を主人公にし、その心理を追求した內容。漱石を訪れた青年の半生をもとに書かれたルポルタージュ的作品。漱石作品の中では異色作とされています。
裝丁デザインは橋口五葉によるものです。漱石本の裝丁の多くはこの橋口五葉が手がけています。うるしで塗られた大きなツワブキの葉が印象的。美しい裝丁が見事な一冊です。