No. Inc.『Early Reflections EP I』は、実験電子音楽デュオNo. Inc.(Material ObjectとAtomによるコラボレーション)による2014年発表の限定12インチEPである。ドイツを拠點(diǎn)に両アーティスト自身が立ち上げたレーベル「No.」の第一弾リリースとして位置づけられる。No. Inc.の両名、すなわちAtom(電子音楽の重鎮(zhèn)ウーヴェ?シュミット)とMaterial Objectは、それぞれ多數(shù)のプロジェクトを橫斷しながらテクノとアンビエント雙方の領(lǐng)域を探求してきた経歴を持ち、本EPにおいてもその系譜が體現(xiàn)されており、伝統(tǒng)的なアンビエント?テクノの再構(gòu)築やポスト?ジャンル的なミニマリズムの文脈に連なる知的なサウンドが展開されている。

Atomは1990年代にFaxレーベルでのアンビエント作品やRaster-Notonでの実験的グリッチ作品などを手掛けてきたことで知られ、Material Objectもまた同様にデジタル世代の電子音響を探究してきた。こうした背景から生まれたNo. Inc.は、アンビエント?ミュージックの伝統(tǒng)(Brian Eno的な環(huán)境音楽やBasic Channel以降のダブテクノなど)に対する現(xiàn)代的な応答として位置づけることができる。

このEPには2曲のみ収録されているが、その內(nèi)部構(gòu)造は対照的かつ相補(bǔ)的である。A面の「Early Reflection Part I」(10分52秒)はビートのないアンビエントドローン作品であり、B面(裏面、アナログ表記ではAA面)の「Refraction I」(12分58秒)はミニマルなテクノトラックとなっている。A面では靜的な和音の持続音や漂うような音響テクスチャーが中心で、タイトルが示すように「初期反射音(Early Reflection)」さながら殘響成分が空間を満たし、抽象的ながら調(diào)性的にも微妙に変化するサウンドスケープを形成する。ゆったりとした持続音のレイヤーは明確な調(diào)性を超えてモーダルな曖昧さを湛え、時(shí)間軸上で緩やかに展開する。そのハーモニーはミニマルかつ幽玄であり、“クラシックなドローンから抽象音景まで”を描き出すという當(dāng)初の狙い通りの音世界となっている。高音域には氷の結(jié)晶のように繊細(xì)で冷ややかな響きが漂い、低音域は控えめながら地鳴りのような持続低音が隠れている。その結(jié)果、音響空間には研ぎ澄まされたデジタル性と仄かな溫かみが同居し、聴き手は広大な音の海に浮遊する感覚を味わうだろう。

他方のAA面「Refraction I」は、A面の音素材やテーマを「屈折」させ再構(gòu)成したかのような構(gòu)造を持つ。4/4拍のキックによるミッドテンポのリズムが導(dǎo)入され、徐々にベースヘビーで深淵な音響空間が立ち上がる點(diǎn)で、伝統(tǒng)的なテクノの文法に則りつつも非常に実験的だ。硬質(zhì)な低音のキックとサブベースが空間を満たし、その上にエコー処理された斷片的なシンセ?パルスやノイズが浮遊する様は、まさに洞窟のような殘響空間でテクノが鳴っているかの印象を與える。リズムのアーキテクチャはミニマルだが極めて有機(jī)的で、音の間隙に漂うアンビエント成分と明確な鼓動(dòng)がせめぎ合う。周波數(shù)スペクトラム上では、A面で控えめだった超低域が前景化し、逆に高域は丸みを帯びて背景に溶け込むバランスになっている。その結(jié)果生まれる音響的トポロジーは、上下(高低)と前後(遠(yuǎn)近)に奧行きを感じさせ、音が配置されていない空白の「間」さえも一種の地形として意識(shí)させるだろう。ステレオ定位も巧みにデザインされ、ヘッドフォンで注意深く聴くと微細(xì)な定位変化や殆ど知覚限界にある効果音の存在に気付くが、大音量でスピーカー再生すると初めて浮かび上がる低音の躍動(dòng)や肉體に訴える振動(dòng)がある。これは意図的な設(shè)計(jì)であり、環(huán)境音響と身體的ビートという両極を一枚の盤で対話させることに成功している。

総じて、本EPの2曲は靜寂と運(yùn)動(dòng)、質(zhì)量のない音響と重量感ある振動(dòng)という二面性を成し、多層的な聴取體験を提供する。そのデュアリスティック(二元的)なアプローチは、聴き手を同時(shí)に二方向へ引き裂くような不思議な感覚を生み出し、アンビエント音楽=受動(dòng)的BGMという通念をも揺さぶる挑戦となっている。まさに微細(xì)音に沒(méi)頭する內(nèi)省的リスニングと、身體を揺らす音圧への沒(méi)入という二つのモードを行き來(lái)させる聴覚體験の地平が、この作品の構(gòu)造に織り込まれているのである。

技術(shù)的な側(cè)面では、AtomとMaterial Objectはいずれもデジタル?オーディオの最前線で活躍してきたことから、本作でも高度にデジタル制御されたサウンドデザインが聴かれる。精緻なDSP(デジタル信號(hào)処理)による音響合成と編集を駆使しつつも、結(jié)果として生み出される音世界は無(wú)機(jī)質(zhì)になり過(guò)ぎず、人間の知覚や心理に訴える微細(xì)なニュアンスが宿っている點(diǎn)に注目したい。例えばA面のドローンは一見(jiàn)靜的で人工的だが、その揺らぎや倍音構(gòu)造には聴き手の時(shí)間感覚を変容させるサイケデリックな効果がある。これはまさに「アンビエント音楽は受動(dòng)的であるべき」という過(guò)去の定説を覆し、能動(dòng)的?沒(méi)入的なリスニング體験を生み出そうという蕓術(shù)的意図の表れであろう。同様に、B面のテクノトラックもクラブのダンスフロア向け機(jī)能性を保ちながら、その音像はどこか現(xiàn)実離れしており、既存のテクノ文脈への批評(píng)的距離が感じられる?!窻efraction I」はあくまで踴れるリズムを刻みつつも、一般的なクラブヒットとは一線を畫す実験性を帯びており、これはテクノというインフラストラクチャー自體への內(nèi)在的批評(píng)とも受け取れるだろう。


厚紙スリーブに「No.」のロゴ三角形がくり抜かれた特製ジャケット(ダイカット?スリーブ)仕様の限定盤。 特筆すべきはその物理的なプレゼンテーションで、ジャケットは表面にレーベルロゴである三角形の図形が精巧に切り抜かれた特殊デザインとなっている。このカットアウトから內(nèi)側(cè)のアートワークが覗く凝った裝丁は、レコードを一種のアートオブジェとして演出しており、同レーベル他作品にも共通する美學(xué)的アイコンだ。盤は180グラム厚のヘヴィーウェイト?バイナルにプレスされており、質(zhì)感のあるマット仕上げのスリーブとの組み合わせで高級(jí)感。カタログ番號(hào)「No. 901EP」が示すようにNo.レーベルの第1號(hào)アナログ作品であり、300枚限定プレス


コンディション: EX+/NM
盤面?音質(zhì)狀態(tài)は良好で、再生においてノイズや針飛び等の問(wèn)題は見(jiàn)られません。目視でもヘアライン程度の極僅かなスレが見(jiàn)られるのみで光沢も十分に殘っており、概ねEX+クラスと言えます。ジャケットも擦れや折れはほとんど無(wú)く良好な保存狀態(tài)(表裏ともにクリーン)です。メディア/スリーブともに経年劣化の少ない保存狀態(tài)を維持しています。

留意事項(xiàng)|Transactional Framework