京都の老舗の扇子商を女手ひとつで切り回す辻村多紀は、弟が內ゲバで殺してしまった學生の通夜で、その父親、柚木洋文と出會う。周囲の冷たい視線と母親の罵倒の中で、毅然としてかばってくれた柚木に、多紀は殺人事件の加害者と被害者の家族という関係をこえて引かれるものを感じる。それは28歳にして初めて多紀が知った戀であった。京の雅のなかに現(xiàn)代のロマンを刻んだ長編。