約三十年前に書かれた與謝野晶子?鉄幹の伝記小説。約二十年のち、渡辺淳一も『君もコクリコわれもコクリコ』と題してこの夫婦の伝記を綴っているが、前半生に関しては、本書の方が登場人物の心理描寫が巧みで、臨場感があり、面白い。
鉄幹の人格の異常さについても本書の方が詳しく描かれている。これらの書から察するに、鉄幹は『DMS-Ⅳ-TR 精神疾患の分類と診斷の手引き』による所の『自己愛性人格障害』であったと思われる。そんな鉄幹を愛してしまった晶子の凄まじい苦悩が伺える。
ただし、後半生に関しては、渡辺淳一の『君も???』下巻の方が詳細(xì)に描かれているので、両方に目を通した方が夫婦の生涯の全貌をよく知ることができる。
晶子と鉄幹という二人の天才歌人、そして晶子の永遠(yuǎn)のライバル?山川登美子、鉄幹の先妻?瀧野への著者の愛が感じられる珠玉の伝記小説。