『壁』(は、安部公房の中編?短編集。「S?カルマ氏の犯罪」「バベルの塔の貍」「赤い繭」(「洪水」「魔法のチョーク」「事業(yè)」)の3部(6編)からなるオムニバス形式の作品集である。
1951年(昭和26年)5月28日に石川淳の序文を添えて月曜書房より刊行された。表題作でもある「壁―S?カルマ氏の犯罪」は安部の最初の前衛(wèi)的代表作で、第25回芥川賞を受賞した。ある朝突然、「名前」に逃げ去られた男が現(xiàn)実での存在権を失い、他者から犯罪者か狂人扱いされ、裁判までもが始まってしまい、ありとあらゆる罪を著せられてしまう。彼の眼に映る現(xiàn)実が奇怪な不條理に変貌し、やがて自身も無(wú)機(jī)物の壁に変身する物語(yǔ)で、帰屬する場(chǎng)所を失くした孤獨(dú)な人間の実存的體験と、成長(zhǎng)する固い壁に閉ざされる空虛な世界と自我の內(nèi)部が、安部公房特有の寓意や敘事詩(shī)的な軽さで表現(xiàn)されている。