巖波文庫●ディケンズ短篇集 チャールズ?ディケンズ/小池滋 巖波書店　1993

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●1993年版。発売時定価～553+稅円
●ユーモアと明るい笑いの作家ディケンズ（1812―70）の世界も短篇に目を転ずると相貌を一変する．自らの血に流れる狂気を自覚した男が妻を殺害するに至る「狂人の手記」，実直な鉄道員が幽霊の発する警告に怯える「信號手」など，人間の暗い異常な心理を追究した作品を中心に，幻想的作風(fēng)の短篇も加え11篇を収録する． 墓掘り男をさらった鬼の話 旅商人の話 奇妙な依頼人の話 狂人の手記 グロッグツヴィッヒの男爵 チャールズ二世の時代に獄中で発見された告白書 ある自虐者の物語 追いつめられて 子守女の話 信號手 ジョージ?シルヴァーマンの釈明 解説。 チャールズ?ディケンズ（Charles Dickens）は1812年に生まれ1870年に死んだイギリスの作家である．生涯や作品については，ほとんどの百科事典，文學(xué)事典，人名事典などに記されているから，ここでは省略することにして，彼の短篇について述べてみたい． 　ディケンズは一般に長編小説作家として知られ，その代表作もすべて長編であるといってよい．……しかし，彼の処女作は文字通りの短篇小説だった．……処女作の好評に気をよくした彼は，その後次から次へと短篇小説，スケッチ，ルポ記事といった類の文章を，あちこちの新聞や雑誌に寄稿した．…… 　十九世紀(jì)になって雑誌がかなり多くの読者を獲得できるようになると，そこが短篇小説発表の恰好の場となった．ディケンズも雑誌編集に異常なまでの関心――いや，執(zhí)念といった方がよいか――を抱き，何度も編集長の椅子に就いた．そしてそこに自身長編小説を連載するだけではなく，短篇小説や（主として時事的な）エッセイをも寄せたものである． 　このようにディケンズは死ぬまでにかなりの數(shù)の短篇小説を発表したが，本書では獨立した小説として読め，文學(xué)的価値の高いものを選んでみた．また內(nèi)容的に統(tǒng)一をとるために，主として次の三つの特徴が際立っている作品を集めた． 　一，超自然的で，ホラーとコミックが奇妙に混在していること． 　二，ミステリー的要素が強いこと． 　三，人間の異常心理の追及． 　もちろん，それぞれが整然と分離しているわけではなく，一つの作品に二つ以上が混然一體となっている場合が多い． 　配列は年代順となっているから，順を追って読んでゆけば，ディケンズの作家としての成長や変化の一端が理解できるであろう．
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